日の丸の呪縛 _ 第1話 _ 日の丸の呪縛

写真中のモチーフ(絵としての主題や中心となる部分)の配置についてお話ししよう.写真画像はほとんどの場合長方形.その長方形の中にどのように注目しているモチーフを納めるのかによって,撮影画像から受ける印象が大きく異なる.
今,家に居るので,我が家のテレビの横に飾っているポトスを被写体とする.
ポトスの観賞価値は葉に斑(「ふ」;葉緑素が抜けた白い部分)が入るところだ.植物の頂部やや左に比較的広い範囲に斑が入った葉があるのでこれを映像のモチーフとする.
モチーフの配置に注意を払わない人の多くはこのP1ようになるだろう.モチーフの葉が,ちょうど「日の丸の旗」のように,長方形の中心部に配置されている.何か味気ない絵だ.
なぜ,多くの人がこのような写真を撮るのだろう?
P1
その原因は統一されたカメラの規格にある.
カメラでは,基本的に,ファインダー(のぞき窓;デジカメでは液晶画面)のフォーカスエリア(被写体に焦点を合わせるゾーンで,[ ]や◎などで表示されているところ)がファインダーの中心に設定されている.機能が充実したカメラでは,中心以外にフォーカスエリアを設定できるものもあるが,コンパクトデジカメの多くは中心にある.したがって,モチーフに焦点を合わせる作業だけで写真を撮ろうとすると,モチーフはおのずと中心に据えられる.
また,多くのカメラは長方形を横にした位置が正位置である.縦位置にするためには両肘が直角となるような位置に構えなければならず,肘を水平に張る横位置に比べてやや窮屈な姿勢となる.しかも機種によっては,縦位置だと非常にシャッターボタンが押しにくくなる.このため,多くの人は,楽な姿勢で撮れる横位置の写真がおのずと多くなる.
このような現象を私は「日の丸の呪縛」と呼ぶことにする.(第2話につづく)