Alnus firma _ Campus Plants

ヤシャブシ / 夜叉五倍子


Betulaceae / カバノキ科
decorated by momi, photo by mich.katz


紀伊半島,四国,九州の丘陵や山地に生える落葉小高木.崩壊地などにいち早く定着するパイオニア種です.


一つの枝に雄花と雌花が作られる植物で,写真の葉芽の左側にある大きめのカプセル状のものが雄花,右側にある小さめのカプセル状のものが雌花です.雄花はこの形で越冬し,暖かくなると弓形に曲がってぶら下がります*1


雌花はまつぼっくりを小さくしたような卵形の堅果になります.この堅果のイメージが夜叉(→http://www.butuzou.co.jp/sonota/yasya.html)に似ていると言うのですが,ちょっとイメージしにくいかもしれません.


一方,フシとは「附子」と書き,ヌルデというウルシ科の植物の葉に寄生したアブラムシが作るこぶ*2のこと.このこぶはタンニンを豊富に含み,「五倍子*3」という,紫がかった灰色に染めるための染料として平安時代から利用されていました.ヤシャブシ堅果にもタンニンが豊富に含まれ,茶色の染料として利用されます.つまり,附子と同じような機能をもつ染料というのが和名の後半部分の由来です.


それにしてもとっても印象的な和名です.しかし,こうしてルーツを深く探らなければ名前の意味が分からないということは,私たちの日常生活から自然を利用する機会が少なくなっていることを暗示しているとも言えるでしょう.


ヤシャブシ堅果を使って染色に挑戦したという記事をみつけました(→http://kurashi.ugaku.com/?eid=331818).なかなかいい色です.草木染めに挑戦してみたくなりました.


あなたもいかがですか?

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