路草 _ デジカメの機能その1「画素数」

本連載で使用しているカメラについて全く解説していなかったことに気が付いた.「コンパクトデジカメできれいな写真やかっこいい写真を」というコンセプトで連載しているのだから,使うカメラの種類や機能も大切な要素だ.連載を始める前にするべきことだったかもしれないが,これから必要に応じてコンパクトデジカメの特徴や機能について,この「路草(みちくさ)」コーナーで解説する.
今日は,画素(ピクセル)数について.画素数とは「撮影した画像を構成する点の数」のこと.したがって,同じ面積の画像を画素数の異なるカメラで撮影した場合,画素数が多いカメラで撮影した写真ほどその中に含まれる点の数が多い,すなわち,情報量が多いことになる.
これまでに掲載した写真はすべて,CASIOのEXILIM EX-Z3(P9,10)で撮影した.
P9
P10
このカメラの有効画素数320万画素.これは,長方形の画像の長辺が2048,短辺が1536の点が並んでいて,撮影画像が総計3145728(=2048×1536,約320万)の点情報によって記録されているということである.
では情報となる点の多少はどのようなことに影響を及ぼすのか?それは,撮影した画像をプリントアウトする時に問題となる.
プリンターで印刷する時,画像情報はやはり点で処理される.プリンターの場合はピクセルでなく,「dpi (dots per inch)」という値を基準にしている.これは文字通り,1インチ,すなわち2.54cm当たりのドット数を意味する.
今,500万画素で撮影した映像を200dpi(インクジェットプリンターで出力する時の標準的な解像度)で印刷する時に適切な用紙のサイズを考えてみよう.
500万画素の撮影サイズ(長辺×短辺)は,およそ2600×1900である.一方,プリンターの解像度は200dpiなので,印刷では長さ1インチ当たりに200個の点で処理される.したがって,記録画像から1インチ当たり200個の点(情報)を出力するのが理想的だ.
記録画像は長辺に2600個の点の情報を持つので,長辺の理想的な長さは, 2600÷200=13インチである.これをcmに直すと13×2.54=33.02cm.同様に,短辺は1900÷200×2.54=24.13cmとなる.33.0cm×24.1cmの用紙はA4サイズ(29.7cm×21.0cm)よりやや大きいくらい.したがって,500万画素で撮影した画像を200dpiでプリントする場合はA4くらいが最適となる.
もし,同じ画像をA4よりも大きなサイズに拡大して印刷するとどうなるか?プリンターはそのまま1インチ当たり200個の点で処理しようとするが,画像の方は,大きく拡大されるほど1インチ当たりの点(情報量)が200個よりも減っていく.その結果,少ない点で多い点を印刷するという状態となり画質が劣化する.身近な例として,画素数の小さな携帯電話のカメラで撮った画像をプリンターで大きく印刷すると画質が劣化するケースがこれにあたる.ただし実際には,印刷サイズが大きくなるほど写真を観賞する距離は遠くなるので,理想サイズよりひとまわり大きなサイズくらい(この例の場合は,B4くらい)で出力しても問題はないらしい.
以上から,デジタルカメラの画素数は,最終的に出力するサイズを考えて検討するのが良いということが分かる.ちなみにこの連載で使用してきた320万画素のEXILIM EX-Z3の最適出力サイズは,26.0cm×19.5cmとなる.これはB5サイズ(25.8cm×17.1cm)くらい.実際にはA4くらいまでなら問題ないだろう.