フレーミング _ 第2話 _ワイド・アンド・テレ「ズーム機能」

フレーミングに関するお話の第2話はレンズのズーム機能について.
最近のほとんどのデジカメではズームレンズが使用されている.3〜4倍ズームのレンズを搭載したカメラが最も一般的だが,最近は12倍のような高倍率のズームレンズを搭載している機種もある.
カメラのズーム能力は,多くの場合,カメラ本体(多くの場合レンズ開口部付近)に記されている.この連載で使用しているカメラだと,4/22に掲載したP9の写真からわかるように3x OPTICAL ZOOM(3倍光学ズーム)だ.
さらに,レンズ開口部下部に単位mm(ミリ)を付して書かれている数字の範囲からもズーム能力が分かる.5.8mm−17.4mmと書かれているのが見えるだろうか?これはレンズの焦点距離と言って,レンズ開口部から入った光が焦点を結ぶまでの距離を意味する.焦点距離が短いと写り込む範囲「画角」が広くなり,長いと画角が狭くなる.これで分からない人は,前者の短い焦点距離が広い範囲を撮影できる「広角(ワイド)」側,後者の長い焦点距離が遠くの被写体を大きく撮影できる「望遠(テレ)」側と覚えて欲しい.このコンパクトデジカメでは,5.8mm広角側から,その3倍の17.4mm望遠までのズーム機能を持っているということだ.
ではズームは,単に広い範囲を写す場合と遠くのものを部分的に拡大して写す場合を変換するだけの役割しかもたないなのか?
それは違う.広角側と望遠側では被写体(モチーフ)の周囲背景の見え方が変わることを是非知って欲しい.
再びマリアッチ人形の登場.下の写真は,最も広角側(焦点距離が短い状態)で撮った写真P11と,その逆の最も望遠側で撮った写真P12の順に並べている.
P11
P12
モチーフとなるマリアッチの大きさが同じくらいになるように,モチーフとカメラの距離を変えて撮影している.つまり,広角側ではモチーフに寄って,望遠側ではモチーフから離れて撮ったということだ.
背景にいるバンドの数や大きさと人形や戸棚の縦の線の数に注目して頂きたい.最も広角側で撮ったP11は,最も望遠側で撮ったP12に比べて背景が広く写り,しかも背景との距離が遠くに見える.望遠条件のP12では,逆に,背景が狭く,かつモチーフに近づいて感じられる.またこの例では分かりにくいかもしれないが,広角条件では,被写体が(ちょうどカーブミラーに写った物体の様に)望遠条件よりも少し横に広がったように写ることも,広角レンズの描写特性だ.
以上のようにカメラレンズの広角と望遠では,例え被写体を同じ大きさで捉えても,写真から受ける印象がかなり異なる.こうしたズームレンズの特徴を活かしながら,自分の意図する構図の写真を撮れるようになりたい.