フレーミング _ 第3話 _ 望遠の効果「圧縮とボケ」

ズームレンズの特性を利用した撮影例を紹介しよう.今日は望遠の「圧縮効果」.
昨日の話で,望遠レンズには遠近感を小さくする効果があると説明した.この「圧縮効果」はたくさんの人やものの集まりを撮る時に威力を発揮する.それを説明するために,これまで使用した3倍ズームレンズのコンパクトデジカメより大きな望遠機能を持つデジカメを使うことにした.使用したデジカメは,NIKON COOLPIX5700.
P13
P14
2年前に購入したやや古いコンパクトデジカメだが,焦点距離8.9-71.2mmと8倍ズームレンズを採用しており,望遠機能が非常に大きい.そのカメラの最も望遠側で我が家のピアノの鍵盤を横から撮影した写真がP15だ.
P15
肉眼で見る印象とは異なり,パターン化したピアノの鍵盤の配列が手前から奥まで圧縮された印象を受ける.ちょうど,双眼鏡やテレビカメラが遠くの被写体を捉えた映像と同じような印象だ.この様に,ありふれた身の回りのものでも,望遠レンズで覗けば,新鮮な印象を与えてくれる.Natural Photographic の「旬のもの」6/28のチューリップのお花畑の写真にこの望遠圧縮効果が利用されているので参照して欲しい.
さらに,望遠レンズの特性として,焦点を合わせた面の前後のボケ方が広角レンズより強くなることも覚えておこう.焦点が合う前後の範囲を「被写界深度」と言う.望遠は被写界深度が浅く,広角は被写界深度が深いと覚えておこう.
P16は同じカメラの最大望遠能力で2体のマリアッチ人形を横から捉えた写真.
P16
この「ボケの効果」によってモチーフとした前のマリアッチが後ろのマリアッチを背景として浮き出る.その結果,「なんとなく奇麗」なポートレート風の写真に仕上がっている.さらにこの時の付随メリットとして,背景(画角)が小さくなり,モチーフ以外の邪魔なものを画像の外に排除できる点も覚えておいて欲しい.