お雑煮

の多様性
昨日の昼,雑煮が話題になった


博多の雑煮は全国的にみても豪華な部類だ.トビウオの乾物「アゴ」で出汁をとる.軽い上品な出汁であり,具材となる玄界灘産の油がのった寒ブリとの相性が非常に良い.青のものにはカツオナと言うカラシナの仲間を使う.典型的な地方野菜で,博多でも正月を中心とした冬の時期にしかほとんどお目にかかれない.辛くはないが苦みが強い.しかし,寒ブリの切り身を巻いて食べるとうまい.我が家では餅は焼いて入れる.その他,椎茸やかまぼこ,銀杏などその家庭の好みに合わせた具材が入る.


大学時代まではそんな博多の雑煮しか知らなかったが,大学を卒業する頃から結婚する頃にかけて博多以外の地域で雑煮を頂く機会が出来た.ひとつは,佐賀県出身の友人の実家で,有明牡蛎を具材にした雑煮で,もうひとつは,鹿児島出身のかみさんの実家でエビ出汁のすまし汁に大豆もやしが入った雑煮だ.この経験から,雑煮の種類は多用であり,地方によって古くから受け継がれているスタイルが今でも残されていることを知った.雑煮は日本の伝統文化である.


昨日の西日本新聞に日本の雑煮の地域的な特徴を紹介してある.それによれば,雑煮の汁や,餅の形には地域的な特徴が有ると言う.近畿地方周辺はみそ仕立ての汁だが,それ以外のほとんどの地域はすまし汁らしい.雑煮に入れる餅は,中部地方辺りを境に,東側の地域では角餅を,西側の地域では丸餅を使用する.雑煮文化に地理的変異があるということだ.


特徴ある地方の雑煮の中で最も目を引いたのは香川の雑煮.この地域ではみそ仕立ての汁に,なんと,「餡(あん)入り」餅を入れるらしい.一体どんな味がするのか興味有るが,餡子が苦手な私が試すには相当勇気が要りそうだ.案の定,うちの教授にも不評だった.


それはともかく,私は,そのような摩訶不思議な食材の組み合わせが食文化として延々と受け継がれていることがすごいと思う.


砂糖が貴重品であった昔は,餡子など砂糖を使用した食材は庶民にとって日常品ではなかったはず.そんな貴重品である餡子を正月に親戚縁者で雑煮に入れて食し,一年を幸せに生きようという願いを込めて始まったのではないだろうか.それとも最初は,「ご飯にマヨネーズ」のような意外性と冒険心に富む人の発想だったのだろうか.