Ilex rotunda _ Campus Plants

クロガネモチ / 黒鉄黐


Aguifoliaceae / モチノキ科
decorated by mae & gucci, photo by mich.katz


寒い冬の間,
赤い実をびっしりとつけて


本州関東以西,四国,九州,沖縄,および朝鮮半島,台湾,中国,インドシナの暖帯から亜熱帯に分布する常緑高木.


和名「黒鉄黐」は,葉柄や幼枝が黒紫色を帯びているモチノキ(近縁種)と言う意味だそうです.


街路樹として多用される緑化樹木で,ほとんどの人が目にしたことがあるはずです.地味な樹ですが,冬の間中,赤い実をたわわに実らせる姿が,必死で存在をアピールしているようで,健気に見えます.


この樹には,緑化樹としての役割だけでなく,トリモチの原料としの役割もあります.


と言われて「えっ,トリモチって何?」と思う人もいるのでは.


かく言う私も,実物を見たのは子どもの頃.長〜い竹竿の先に巻き付けたトリモチで,子どもでは絶対に届かない高木にとまっている蝉をいとも簡単に捕獲する見知らぬおじさんを見て,虫好きの私は羨ましく思った記憶くらいしかありません.


私の叔父は,かつてメジロなど野鳥をたくさん飼っていましたが,きっとトリモチを使っていたのではないかと思います.今では野鳥を保護するという目的でこの技は禁じ手となっています.


トリモチを作るには,5〜6月にクロガネモチやモチノキの樹皮を剥ぎ,これを秋まで水に浸け置き,その後,水を十分に吸収した樹皮を臼に入れて搗き,それを流水で洗う作業を3〜4回繰り返すと出来るそうです.「黐ろう」と呼ばれるトリモチの主成分(高級アルコールエステル)が,水に溶けない性質を利用したいにしえの知恵です.


今日普及している接着剤や粘着テープは,その粘着強度によってたくさんの種類に分けられていますが,クロガネモチからとれるトリモチは「青黐」と呼ばれ,モチノキからとれる「本黐」よりも少し質が劣るために,区別されていたようです.それにしても,トリモチのように動きのある動物をしとめてしまうような粘着材は,今日でも,そう簡単には手に入らないのではないでしょうか.


面白いことに,とりもちには「仲立ち,世話,接待」という意味もあります.第三者の間に入って,仲を取り持つという意味ですね.


最近,グループワークで活躍するファシリテーターも仲介者の役割を担う重要人物.仲を取り持たれた人たちは,きっと,仲介者の放つ粘着パワーで離れられなくなるのです.


by mae, gucci & mich.katz

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