初めての単独講義


私にとって記念すべき日。


前期の授業が始まった。
月曜5限は小ゼミの時間。


でも、今年度はいつもと違う。
昨年までの2年間は、kab-logさんの小ゼミをアシスト。
2年の修行を経て今年度からは独立講義。
大学教員生活16年で初めての単独講義。


「今まで何しとったん」と小中高教員に突っ込まれそうだけど、これって大学では極普通の状況。
一昨年までは助手は講義を持ちたくても持たせてもらえなかった。
教員削減のおかげで、助教という身分が新たに設けられ、講義の一部を持たせてもらえるようになった。
その貴重な一部が小ゼミ。
そのチャンスを使うか使わないかは本人次第。


「せっかく与えられたチャンスを活かさないのはもったいない。」
……と張り切って一コマ持ってみたものの、移動の車中、
「何人受講してくれるんやろうか〜。もし一人も受講希望がなかったらどうしよう。」
と、不安が何度もよぎる。
学生たちに配布された講義案内には、
締め切り後に登録された私の講義シラバスが掲載されていなかったのだから、
そう思うのも無理はない。


講義40分前、伊都キャンパスへ到着。
新しいキャンパス内を多少さまよいつつも目的の講義棟を探し出し、教室への階段を上る。
途中、3年目の小ゼミを開講しているkab-logさんの部屋の前を横切る。
もう20名以上だろうか。
学生がすでに着席している。
スゴい人気だ。
その光景を目の当たりにし、益々緊張しながら自分の教室へ向かう。


教室の前。
ノブに手を掛け、ドアをそ〜っと開けると………


4時間目の講義の真っ最中。
(ガクッ)


慌ててドアを閉め、
照れを隠すようにそそくさとその場を離れ、
廊下を来た方向とは反対にあてもなく直進する。
廊下の片隅に置かれたお洒落な椅子とテーブルのセットを見つけ、
安堵して腰掛ける。
ほぼ無意識にノートパソコンを開き、予定講義内容の再確認作業。


その15分後。
改めて教室へ向かうと……


数名の学生が座っている。
「前の講義の学生か?」と疑心暗鬼になる気持ちを抑えながら、
待つこと10分。


少しずつ。
少しずつだけれども学生たちが部屋へ入って来る。


そして集まった23名の1、2年生たち。


講義を持ったことをこれほど感謝したことが今まであっただろうか。


ありがとう。
ようこそ。