未来に残したい九大キャンパスの風景

mich_katz2005-10-05

九大箱崎キャンパスで写真展を開いている風景写真家の松尾紘一郎さんをお招きし,明日,デジカメ撮影ワークショップを開催する*1.進行を任されている私は,ワークショップのイメージを構築するために,松尾さんに同行して頂き撮影場所の下見を行った.
歩いたのは,地蔵の森〜九大本部,工学部本館〜正門〜工学部通用門〜創立50周年記念講堂と,九大の歴史を感じさせる風景が多く見られるコースだ.写真家と写真を撮ることを意識して歩くと,見慣れた風景の中に意外なキャンパスの表情があることに気付かされる.
その一つが正門だ.赤煉瓦で造られた正門の門柱は九大のシンボルとも言える建造物だが,その正門を写真に撮ることを意識すると,どのアングルでどういう背景で撮れば「かっこよく」見えるのかと考えてしまう.正門の奥には10m以上の背丈のフェニックスが並んでいるのでそれを門柱の間に配置するとかっこいいだろう.
しかしそれはたぶん,すでに九大グッズとして販売されている絵はがきにある構図かもしれない.それだけでは何か物足りなさを感じる.

その時である.正門の向こうに見える工学部本館の屋上から轟音とともにジャンボ飛行機が現れ,正門の真上を通って福岡空港の方へ消えて行った.
そう!これ!この構図だ!
普段,なんの繋がりもないと思っていた「正門」と「飛行機」が,九大のシンボルとして繋がった瞬間だった.
私はにわかに興奮した.
そして私の横で松尾さんも「おおっ!」と感嘆の声を漏らした.松尾さんにとっても写真に収めたい瞬間だったようだ.松尾さんと私の感性が同調したような気がした.
普段は騒音の種としか思っていなかった飛行機だが,それを風景の一部として必要なものかもしれないと感じたのは初めてだった.
20〜30分くらいの時間だっただろうか.松尾さんとゆっくりと歩きながら,キャンパスの風景についてあれこれ話しているうちにふと思った.
九大は移転する.その後,100年近く続いたこの九大の風景はなくなるだろう.かっこいい風景.美しい風景.懐かしい風景.etc.そんな風景を未来の九大関係者に伝えていかなくてよいのだろうか?
私は,松尾さんのような腕の良い写真家にキャンパスの風景を撮影していただき,キャンパスで育まれた歴史を写真として後世に残しておきたいと思った.そうすれば,いつか元岡で開催した「写真deトーク」のように,古い九大を発掘し,新しい九大での創造的活動にきっと活かされるだろう.それは,糸島の悠久の歴史を写真で後世に伝えたいという,松尾さんの気持ちに通じるのではないだろうか.


上「History of Engineering」
右上「A Healing Place in Campus」