Campus Plants _ Yucca gloriosa

アツバキミガヨラン / 厚葉君が代

Agavaceae / リュウゼツラン科

photo by mich.katz


正門を抜けてすぐの緑地にまとまって植えられています.

和名を「君が代蘭」と言います.
立派な、栄光あるという意味の種名「gloriosa」,
あるいは,
君主のローソクという意味の英名「Our Lord's Candle」を
君が代」に置き換え,
栄光ある君主にふさわしい蘭のような花という意味を持たせたようです.
天皇を国の君主としていた明治時代にこの植物が導入されたからでしょう.
今の時代にはあまり受けないネーミングかもしれません.


Yuccaの仲間はアメリカ南西部とメキシコに分布し,
約40種もの種があります*1
今回取り上げたgloriosaの自生地は
カリフォルニア州南部からフロリダ州北部の大西洋岸.


属名Yuccaは,
同地域でカリブインディアンが食する「Yuca」=キャッサバ(タピオカ)
に由来するそうです.
キャッサバ(Manihot esculenta)は全く別の植物ですが,
彼らがキャッサバ芋と同じように
ユッカの芽や若い花茎を焼いて食べていたので
両者を同一植物と扱ってしまったようです.


ユッカで興味深いのはその繁殖生態*2


ユッカの雄蕊から放出される花粉は
普通の植物の花粉と違い,飛び散らない団子状の花粉塊です.
この花粉塊を運ぶのがユッカ蛾という小さな蛾の仲間.


交尾を終えたユッカ蛾の雌は,
ユッカの花の雄蕊に登り,花粉塊を集めます.
雌の頭部には,花粉塊を集めるのに都合のよい
コイル状の触肢があり,それで花粉塊を集めます.
この触肢はユッカ蛾の雄にはありません.


花粉塊を集めたユッカ蛾の雌は別のユッカの花に移動します.
花の中に潜り込むと,今度は,
雌蕊の胚珠(将来種子になる器官)付近に産卵管を差し込んで産卵します.


そして!なんと!
産卵を終えた雌は,ご丁寧にも
自ら雌蕊の柱頭へ移動し,集めてきた花粉塊を柱頭に
ペタペタと授粉していくのです!


この行動には実は意味が有ります.
というのも,
ユッカ蛾が授粉を自発的に(?)行うことにより,
ユッカの受精が成立し,やがて種子が育ち始めます.
そして,卵から孵ったユッカ蛾の幼虫は,
お母さんが育ててくれたユッカの若い種子を食べて育つのです.


「子供のために農業をする蛾」
とでも言うのでしょうか.


そんな〜 うそでしょ〜


とそう言いたくなるような不思議なユッカとユッカ蛾の送粉生態でした.


by mich.katz