Capsella bursa-pasitoris _ Campus Plants

ナズナ / 薺


Cruciferae / アブラナ科
decorated by momi, photo by mich.katz


もう,お馴染みの植物です.


1月7日に,万病を防ぐために食べると言われている 七草がゆ
ナズナは,平安時代の初め頃から,七草がゆに入れる野草の1つとして,我々日本人に,長く親しまれてきました.


冬の寒さにも耐えつつ,緑の葉を広げるナズナの姿から,「ナズナには邪気を払う不思議な力が秘められている」と信じられていたようです.
実際,ナズナには,「貧血,高血圧,風邪の予防」などの効能があり,食材だけではなく,漢方にも用いられています.


頂端に集まって咲いている 白い花の下方に,飾りのように横に張り出してついている「軍配(ハート?)型」のものが,莢(さや)です.莢の中には,種子が入っています.


この莢の形についてですが,ごく希に,ほっそりとした「槍型」のものが出現することがあります.高校の生物(遺伝)学の授業で習った記憶がありませんか?


莢が,軍配型になるか槍型になるかは,『同義遺伝子』によって支配されています.同義遺伝子とは,遺伝子配列上の異なる領域(遺伝子座)にあって,同じような効力を持つ遺伝子のことです.


元々のタイプ(野生型)は軍配型であり,槍型は,突然変異によって変化した同義遺伝子が,その2つの遺伝子座でペアになった場合に発現すると分かっています.


でも・・・私は「槍型」を見たことがありません!


一体,槍型はどの程度の確率で発見できるのでしょう?
確率を単純計算してみました.
(数学の苦手な人は以下の段落を飛ばして読んでもかまいませんよ)


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今,槍型を決定する劣性の突然変異遺伝子 1個が,1万個体に1回の頻度で起こるとします.
すると,集団が保有する この遺伝子座の 全遺伝子数に対する突然変異遺伝子の割合は,(10000×2)分の1=1/20000.
さらに,もう一つの同義遺伝子も,同じ割合で集団内に発生するとします.
集団が無作為に交配して種を生産していると仮定すると,どの世代においても各遺伝子座の遺伝子頻度は同じに保たれるので・・・
槍型を決定する2種の劣性遺伝子が,各遺伝子座にペアでそろう確率は, 1/20000^4=1.6*10^17,すなわち「1000兆分の16」

突然変異の発生が1000個体に1回の頻度で起こると考えても,莢が槍型になるのは「1000億分の16」なのです.
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ランダムな交配が起こらなければ,少し確率はあがりますが,それでも,宝くじの一等確率より低いのではないでしょうか.槍型のナズナを発見することは,四葉のクローバーを発見するよりも幸運ということになるのかもしれません.


ところで,ナズナは別名ペンペン草とも言われます.軍配型の莢が,三味線のばちに似ていることから,「三味線草」,「ペンペン草」と言われてきたようです.


でも,ちょっと待てよ.
もし莢が槍型だったら,ペンペン草ではなくて・・・,ツンツン草なのでは???


by snow & mich.katz