Raphanus sativus _ Campus Plants

ダイコン / 大根


Cruciferae / アブラナ科
decorated by koma, photo by mich.katz


先月,卒業した学生が畑に残して行ったダイコンの花が咲きました.


ダイコンはアブラナ科の植物.いわゆる菜の花と同じ頃に花が咲きますが,花の色は黄色でなく,白.菜の花の鮮やかな黄色に比べると,ダイコンの白い花は優しくて涼しげな印象を与えます.


ダイコンを食用とした歴史は紀元前にまでさかのぼるそうです.ギリシャの史家ヘロドトスによると,ピラミッド建設に使役された奴隷に対してダイコンやタマネギを与えたと言います.


一方,日本人にとっても,ダイコンは米と同じくらい身近で重要な食料だったと思われ,古くは,日本書紀にの中に大根を意味する「於朋泥(おほね)」が登場します.原産地の中央アジアから中国を経て伝わったのでしょう.


それほど日本のダイコンの歴史が古いためでしょうか.日本のダイコンには,桜島ダイコン,守口ダイコンなど,様々な形態の地方在来品種があり,品種分化の著しさには目を見張るものがあります(http://www.mint-j.com/yaoya/2003/09/daikon.htmlを参照).また,大根おろし,なます,ふろふきダイコン,おでん,切り干しダイコン,沢庵漬けなど,食べ方も多様です.


私の実家では,大根おろしは立派なおかずの一品でした.さんまの塩焼きに添える程度ではなく,もっとたくさんの量です.かつて米が凶作の時期には,庶民は少ないご飯を大根おろしで増量して食べたそうですから,その名残かもしれません.ダイコンには,ジアスターゼ,ビタミンCが含まれていますから,食料が豊富でない時代,大根おろしは健康食としても機能していたのではないでしょうか.


ところで,最近,ダイコンの味が物足りないと感じることはありませんか?昔食べていたような,ピリ辛のダイコンおろしに出会う機会がずいぶん少なくなったのでは,と私はよく思います.ダイコンの辛み成分は硫化アリル.揮発性のため熱を通すと失われますが,大根おろしのような生で食するときの辛さを左右します.


近年,スーパーマーケットの生鮮食品売り場に陳列されるのは「青首ダイコン」.’宮重ダイコン’をもとに改良された,作りやすく,柔らかい肉質を持つ,味に「癖」のないこの品種だけが,ダイコンのすべてであるかのように居座っています.世間では,量販店から姿を消した,辛みの強いダイコンの復刻を求める声が強くなっているとか.


地下の見えない部分にそそがれた先人の努力を忘れないようにしたいものです.


by koma & mich.katz

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