大学生版「あの時の、あの食事、あの弁当」その6

食事、弁当を作るのは母親だけでない。


私の父の料理の想い出は、二人だけで旅行した時に作ってもらったカレーライス。
食べ慣れた母のカレーライスと比べて「美味しくない」カレーだった。
でもなぜか残せなかった。
鍋の前に立って黙々とカレーを作る父の姿は真剣そのものだった。
声をかけれないような緊張感があった。
私に「食べさせなくては」という責任感が感じられた。
それを私は側で見ていた。
それが残せなかった理由だと思う。

父の作った弁当


 僕の思い出に残るお弁当は、初めて父が作ってくれた弁当です。
普段は食事や弁当は母が作ってくれるのですが、その日は前の晩から母が病気で寝込んでいて初めて父が弁当を作ってくれました。いつもの父は料理したところなど簡単なものしか見たことがなかったのに、その日だけは朝食から弁当まですべてつくってくれました。いつもより1時間以上前に起床して慣れない料理を作ってくれました。
 僕は朝起きて、何気なく朝食を食べて、何気なく弁当をバックにしまいこんだのですが、学校に登校していく途中にこれらは父が作ったんだと改めて思ってきました。昼の時間がくるまで弁当についていろいろ考えて、なんとなくたのしみでもありました。しかし、その反面、どうせ料理をしない父がつくったのだから冷凍食品ばかりなのだろうなとも思っていました。
 やっと昼休みになり、僕は弁当箱をあけてびっくりしました。すべて手作りだったからです。少し不格好で味も少々男料理的なところはあったし、おいしいとは言い難かったけれど、父が頑張って作っている様子が食べるたびに想像できるような味でした。
 僕は料理に関して一番大切なものは心だと深く感じました。


記憶に残る食事、弁当とは、
「何を食べるか」でなく、
「どう食べるか」ということである。