岡崎好秀先生 in 九大「いのちの授業」


「大学に入って残念だったことは?」


我が大学の1年生に何年も問いかけてきました。
彼らの答えの中で「講義が面白くない」がダントツの一位です。


そういう声に耳を傾けながら「90分の講義は何のためにあるのか」を自問自答してきました。


学問的な知識は、必ずしも講義を受けなくても身につけることができます。例えば私の場合、専門知識のほとんどは、講義ではなく、何冊もの本や何報もの論文を読んで身に付けてきました。今や、誰でもインターネットで学術情報を入手でき、講義を受けなくても専門知識を手に入れることができる時代です。


そういう自己体験を通じ、私は思うようになりました。単なる専門知識の提供に終始する講義が聴き手にとって苦痛にしかなりえないのは、「その90分間でしかできないことをやっていない」ことにあるのではないかと。


昨日の九大「いのちの授業」は、ゲスト講師・岡崎好秀先生(小児歯科医)による特別講義。


「世界一聞きたい授業〜歯科医師からみた食」と題した講義は、講師と受講生が一体となった空間を生み出しました。およそ70名の受講生から、いったい何回の「へ〜〜〜」という声が発せられたことでしょう。


「もっと話たい」「もっと伝えたい」「もっとわかりやすく」といった話し手の熱意。
「もっと知りたい」「もっと学びたい」「もっと広く、深く」という聴き手の想い。


そういったエネルギーが双方向対話で融合しなければ決して発せられることのない声です。それが、昨日の講義では90分間休むことなく続いたのです。


また、話の面白さも然ることながら、冒頭の児童虐待孤食と最後の少年院に関するお話は、受講生のみなさんの心に大きく響いたのではないかと思います。


たまたま生まれ育った環境によって人の運命が左右されるという現実が、私たちの国にあることを知りなさい。
あなたたちが何不自由なく暮らし、好きなことを大学で学べる幸せを感じなさい。
その幸せを分かち合い、将来、弱い立場にある人に寄り添うことができる大人になりなさい。


岡崎先生のお話にはそういうメッセージも込められていました。


とても良質な映画を観賞した後に映画館から出てくるときの、あの「見れて良かった〜」という大きな満足感と似たような感覚が、講義を終えて胸に込み上げてきました。それほど感動的な講義を授けてくださった岡崎先生に改めて感謝申し上げます。


「こんな講義をもっと大学でやってほしい」


そう思った受講生は多かったことでしょう。
その想いを大学に届けられるのは、学生だけであり、それが学生の権利です。
その想いを、是非、言葉にして伝えて欲しいものです。


次回の特別講義は、
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
6/26 第10回「農」の講義
「 広がれ!元気野菜〜命に支えられ、命を支える農業を目指して」
有機農家・吉田俊道氏
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
です。お楽しみに。