同じアイデア

今年に入って新たに挑戦してみたいことがあった.それは保全活動と研究活動を合体させたもの.
九大新キャンパスの生物多様性保全ゾーンにはエビネが4株保護されている.エビネの花は美しい.山の手入れが行き届いていた時代には,山で見つけたエビネを持ち帰り,庭先で育てる人が多かった.これと近年の山林の荒廃や消滅が影響し,エビネ絶滅危惧種となってしまった.園芸の研究と生物多様性保全の活動を行う私としては,なんとか新キャンパスの保全緑地にエビネ群落を復元したいと思っていた.
元岡周辺の古い集落を予備的に調査したところ,民家の庭先には昔この地域で山採りしたと言われるエビネの仲間が予想以上に残されていることが分かってきた.これらの民家保存株と山林に残されている野生株を合わせて繁殖・保存すれば,かつてこの地域に存在したエビネの遺伝子プールをある程度復元することができる.その一方で,このまま放っておけば,民家保存株も消滅していく可能性がある.そこで,民家保存株の出処をある程度確定するための遺伝子分析と,地域個体群の培養増殖や個体群復元に関する活動をセットにすることにより,研究活動と保全活動を融合するというのが私の目論見だった.
ところが,本日,研究室の大学院生のT君が,とある学会で「紀伊半島南部における民家庭園内のエビネ属植物のAFLP変異」という発表があったことを教えてくれた.世の中には同じ発想をする人はやっぱりいるものだ.ちょっと悔しいが,研究と言う点では先を越されてしまっていた.
が,九大新キャンパスの生物多様性保全に関する実践活動の一環としては,依然として魅力あるプロジェクトだと思う.周辺集落に山採り株が保存されているうちに是非挑戦してみたい.