いま会いにゆきます

久しぶりに映画をみたくなったので,近所のレンタルビデオショップへ行った.最近は邦画が人気だ.新作コーナーの陳列棚に洋画と同じくらい邦画のソフトが並んでいる.見たい新作がいくつかあったが,ほとんど貸し出し中である.
そこで,返却されたばかりのソフトが並べてあるコーナーへ行き,そこに一巻だけあった「いま会いにゆきます」を借りることにした.ミリオンセラーとなった同じタイトルの小説を映画化したもので,昨年秋にたいへん話題になった.
最近,巷では「純愛」小説なるものが流行しているようだが,私はこういうジャンルの小説を読んだ記憶がほとんどない.恋愛ドラマや映画もすすんで見ない方だ.が,妻を含め周辺からこの映画をみてとても感動したという声を耳にする機会があったので,どんなものか見てみようくらいの軽い気持ちで借りた.
この物語は,脳の働きに少し障害のある巧(たくみ)と一人息子の佑司(ゆうじ)のもとに,亡くなったはずの巧の妻,澪(みお)が翌年の梅雨に6週間だけ戻って来て再び3人で暮らし,家族や夫婦の愛を深め,そしてまた去って行くというファンタジー仕立てになっている.この内容だけだと単なるファンタジーラブストーリーでしたね,で終わってしまうのだろうが,ファンタジーの仕掛けを「たくみ」に利用し,意外な展開を見せる終盤のストーリーがとても面白い.無意識のうちに物語の中に引き込まれ,涙腺の弱い私は感涙してしまった.身体に障害のある無垢な父親を主人公にした物語という点で「フォレストガンプ」を連想したが,ファンタジックな要素が巧く盛り込まれている分,「いま会い」の方が感動的である.ロケ地となった山梨県北杜市の美しい雑木林やヒマワリ畑の映像も感動を増感するのに一役買っている.
作者の市川拓司さんは,作家活動を始めた頃,ミステリー小説を書いたり,インターネット上で小説を発表していたらしい.最近の市川さんのBlog「doorinto*1」には風景写真が掲載されており,自然や動植物を意識した記事が多い.そんなナチュラリストとしての感性も小説や映画の風景にきっと反映されているのだろう.「いま会い」のヒットを受けて,「恋愛寫眞」という小説も映画化されることが決定している.今度は,映画を見る前に小説を読んでみたい.