環境教育先進事例調査

環境教育に関する先進事例の調査で,昨日,龍谷大を訪問した.
朝10時半頃龍谷大の瀬田キャンパスに到着してから夕方4時(くらいだったと思う)まで,T教授の説明に耳を傾けながら「龍谷の森」を歩き回った.
龍谷の森は,かつて京都と江戸を結んだ東海道が通る,滋賀県琵琶湖南部の丘陵地に位置する.森の面積は38ha.ひとたび森に踏み込めば,キャンパス内であることを忘れるほど深い森がそこには広がり,2〜3時間くらいはすぐに時間が過ぎてしまう.それほど「大きい」という印象をまず受けた.
また,龍谷の森は昭和30年頃まで人が利用していた典型的な雑木林だが,コナラなど落葉性の樹木が比較的多く見られるため,放棄されて長い年月がたった森であるにもかかわらず,林内が比較的開放的で明るく,我々が九州で見ている雑木林とは様子が随分異なる.
大学では,1989年に取得したこの森を,必要以上に開発せず,日本の典型的な「里山」として保全し,環境教育のためのフィールドとして活用する努力がなされてきた.現在,学内学生や地域住民を対象とした,自然観察,ネイチャートレイルの整備,堆肥作り,椎茸作り,など様々な実習授業や地域交流イベントが行われており,年々,参加者が増える傾向にあると言う.
同時に,大学の研究者を中心とした森の生物相に関する地道な調査が行われており,貴重な生物の存在が少しずつ明らかになっている.例えば,生物相の豊かさの指標であり,絶滅危惧種でもあるオオタカが,アカマツの巨木に営巣していることが確認されており,また,最近,稀少なラン類やキノコ類が見つかっている.我々は,モグラの穴の排泄物があるところにしか出現しないナガエノスギタケを見せて頂いた.このキノコは,モグラの排泄物から窒素を貰うと同時に,コナラの細根にも菌糸を延ばして炭素を貰い,その一方で,モグラの排泄物の速やかな分解やコナラの窒素吸収の促進に役立つという3者の共生関係を担っているキノコである.実物を前に,T先生からそんな話を聞いて感動した.
近年,龍谷の森の保全活動は大津市との恊働プロジェクトにまで発展しており,昨年5月には,その成果が文部省に認められ,「里山学・地域共生学オープンリサーチセンター」が開設された.
キャンパス緑地を活用した講義や実習の充実性,市民や行政との積極的な交流活動など,どれをとってもこれからの我々の活動にとって大切であると同時に,非常に参考になる事例が多数あり,さくさんの刺激を頂いた.
それにしても,T教授の森を歩く速さは九大のY教授にひけをとらなかった.森をきびきび歩けない人は生態学者になれないことを私は悟った.また,龍谷の森でとれたキノコのとても美味なオリーブオイル漬けをご馳走して下さったE教授は,金属工学がご専門であるにもかかわらず,キノコにとても精通していた.そのE教授が「毒キノコとそうでないキノコはどう見分けるのですか?」と言う私の質問に対して放った言葉が忘れられない.
「毒の無いキノコは私を食べてと言っているからすぐ分かりますよ・・・」と.