日本一受けてみたい論文作成指導


少し前のことだが、指導している大学院生の論文がリジェクトされた。およそ半年をかけ、3回のやり取りの末だ。その学生の落胆が大きかったことは想像に難くないが、2回目のレフリーコメントの印象が良かっただけに、私も意外で残念だった。


学生は、雑誌水準をできるだけ落とさずに再投稿することを希望してきた。自分が今持っている知恵のすべてを注ぎ込んだつもりの私から、投稿雑誌の水準を少し下方修正するという選択肢が学生に提案された後のことだったが、幸いなことに、まだ時間には余裕が有る。


そこで、考えを改め、私が最も頼りにするY先生にお願いすることにした。Y先生は、複数の国内学会の長を同時に務められたこともある実力者であると同時に、最近は国際舞台で目覚ましい活躍をされており、大変多忙な方だ。それを承知の上での無理なお願いだった。快く承知下さった。研究室の指導学生のために確保された時間の隙間を縫って私たちの論文を見て下さったのだ。大変有り難い。


そのY先生より授かった”論文改訂の方法論”がスゴかった。それは、ちょうど私たちの研究と共通点の多い内容で論文を書いているY先生指導下の大学院生のために独自に作られたものだ(この改訂方法に関する一連の記事が、Y先生の7/21以降のブログhttp://d.hatena.ne.jp/yahara/に紹介されている)。内外の論文の書き方を引用し、

  • How to write comprehensive sentences
  • How to write clear introduction
  • How to write well-considered discussion

と、三部構成でまとめられた“論文作成の重要なルール”。このひとつひとつのルールが、共通する色で塗られた、指導大学院生が実際に書いた文と改定後の対応する文を比較しながら、とても丁寧に解説されてゆく。これまで、多くの人が感覚的にやってきた作業が具体的かつ論理的に解き明かされていった。その解説は、これまでに20冊は下らない論文の書き方に関する本を読み、文章力に自信のある私にさえ、抵抗なく心にストンと落ちていった。


その上、私たちの研究データの解析方法を工夫することにより、これまでの研究では指摘し得ていない学術的な見解が生み出される可能性があることまで、Y先生は指摘下さった。


あっという間の2時間。その間に頂いたアドバイスには、私自身も経験したことがないほど質の高い内容が詰まっていた。このところ、教える側の自己満足の感を拭えない大学の専門教育に嫌気がさしていた私は、Y先生の論文指導レクチャーから新たなやる気と希望を頂いた。


このレクチャーは、今年、私が大学院生に薦める日本一受けてほしい授業だ。