食卓の向こう側・進化編 〜 二足歩行と食卓の関係
「食のスタイルは進化するのか?」
最近、そんなことが気になって、ある本に行き着く。
著名な霊長類学者山極寿一先生の著書だ。
いま「食べること」を問う―本能と文化の視点から (人間選書)
- 作者: 伏木亨,山極寿一,サントリー次世代研究所
- 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
- 発売日: 2006/12
- メディア: 単行本
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とても面白い学説が紹介されていた。
二足歩行の進化と食の社会性の成立には密接な関係があるというのだ。
山極先生によれば……
- 熱帯雨林の中で、人類祖先とゴリラやチンパンジーとの間で食環境が競合する。
- 相対的に弱かった人類は直立二足歩行を進化させ、食料を求めて熱帯雨林から草原へ移り住んだ。
- 草原は気候の変化が激しく、過酷な環境。
- しかも、直立二足歩行によって骨盤の形が変わったため、頭の小さい胎児の状態で子どもを産むようになった。
- こうした条件では、乳児や子どもの死亡率が高い。
- 子孫数を増やすために、1〜2年(霊長類は5〜7年)へと授乳期間を縮め、出産間隔を短縮する進化が起こった。
- その結果、母親は何人もの年齢の異なる未熟な子どもを抱えることになった。
- 未熟な子どもたちは母親以外の大人たちから食のケアを受けなくてはならなくなり、共同保育が進化した。
- 類人猿にはない、食の“分配行動”が起こり、持ちつ持たれつの意識や、互酬性が生まれた。
……と言う。
つまり、共同保育の中でみんなで食べる時に生じる、抑制と協力、同調や葛藤などの社会性が、人類を人類足らしめた直立二足歩行と並行的に進化したということ。その一方で、食の分配や共同保育のような社会性は類人猿には進化していないという。彼らは“弧食”をかたくなに守っているらしい。
一品持ち寄りで、つつき合って食べる九大方式の弁当の日は、図らずも、人類が最初に進化させた食の社会性を垣間見ているひと時なのかもしれない。