人生初の規模

朝倉高校での生徒向けの食育講演。


8月下旬、この地域の保健委員の合同研修会で私の話を聞いた朝倉高校の生徒が、「あの話をみんなにも聞いてもらいたい」と先生に進言して実現した。
こういう依頼は無条件に受け入れるようにしている。


全校生徒数約800名。



今年、受けた講演やワークショップは通算53回。
それでも未だ経験したことない最大規模。
“人生初”が今年最後の講演で訪れた。


800人の無言の視線と黒一色の出立ちには、話し手を緊張させる威圧感があった。
でも……、
800人の体育館内で共鳴する笑い声には、話し手を乗り乗りにさせるパワーがあった。
800人の涙をこらえた真剣なまなざしには、話し手をより真剣にさせるパワーがあった。


充実したひととき。
良い経験だった。


想定外のことも訪れた。


想定外その1‥‥手元でパソコンを操作できない。


壇上に設置された大スクリーンの対面50mほど先の2階解放テラスに、
大砲のような口径の巨大レンズを持つプロジェクターが一台。
まるで映画館のように、そこから映像を投影するのである。


「ケーブルがないので、パソコンを手元では操作できません。」


予めそう言われていた私は、
使用予定のスライドファイルをすべてUSBフラッシュメモリにコピーした。
それを、プロジェクターに接続した学校の備品パソコンに装着し、
オペレーター役の先生に操作してもらうことになった。
しかし(これは想定したことだが)、
一部の写真が文字化けしている。
MacPCファイルをWinPCで読み込むとよく起こるトラブルだ。
pdfに変換したファイルを使うことになった。
音楽は手元で操作し、接続した携帯スピーカーからマイクで音を拾う。


自分で自由に操作することができないのはたいへんもどかしかったが、
アニメーションを使用しなくても、
スライドがなくても、
話せる力を身につけていなくてはならないという自己研鑽になった。


想定外その2‥‥この学校はすでに弁当の日を実践していた。


小中学生の弁当のスライドをたくさん用意していたので、内容を変更しようと思った。
しかし、それをまたpdfファイルに変換してとなると時間が足りない。
考え方を変えた。
弁当にはいろんな心を育てる力が秘められている。
生徒も先生も弁当の日は学校が楽しくてたまらなくなる。
「年1回しかない弁当の日を、年2回、3回に増やしたい」と自発的に思えるようなる。
小中学生の弁当を見せながら、そんな話にしようと思った。


想定がその3……依頼文書に書かれた時間よりも、学校側が予定していた講演時間が20分も短かった。


これは、講演が終わり、校長先生と話して初めて気づいた。
担任の先生方にお詫びをと申し上げたが、
気にするに及ばないと言われた。


本日、窓口になってくださった養護教諭よりお返事を頂く。

先日は、本校での講演会、ありがとうございました。準備の段階から、慌しくて申し訳ありませんでした。講演時間の長さのことをご心配されていましたが、生徒・職員共に”いい講演だった”という感想が聞こえ、ちょっとオーバーしたあの時間は、貴重な時間となりました。


ほっと一息。


頂いた先生の感想。

1年生担任からは、「1年生は、はじめての「弁当の日」なので、趣旨説明のプリントを配布するが、説明しやすくなった」と言っていおりました。


頂いた保健委員(2年女子)の感想。

 今日の講演会を聞いて、私は自分の食生活を見直してみて、とても恥ずかしく思いました。ある学校の残食の状況を見て、とても最悪だとか思ったけれど、実際私が中学生の頃もほぼ似たような状況でした。たった一人が少量残すだけでも、全校分をあわせたらあのような状況になるので、これはひどいな、とだけ最初は思っていましたが、先生の話をたくさん聞いて、残食をするということが、とても大きな問題だということがわかりました。
 牛のみーちゃんの話を聞いて、私はただ毎日、何も考えずに肉などを食べていたけれど、その食べている牛を育てる人、殺す人、加工する人と連鎖していて、その中でさまざまな思いがあるんだなぁと思うと、本当に心を込めて「いただきます」と言いたいと思いました。今日の講演を聞いて「いただきます」がどんなに大切な言葉なのか理解できたような気がします。私たち人間が食べるためだけに殺されたみーちゃんやいろいろな植物に、本当に感謝して言う大事な言葉だと思いました。だから“食”を物と思わずに、私たちが生きていく中で重要な役割を果たしているということを忘れずに生きていきたいです。
 「弁当の日」のお弁当や感想を見て、やっぱり自分で作るということは作ってくれている人の気持ちもよくわかるし、残すということの重大さもよくわかるからとても大事なんだなと改めて思いました。食を通して、人間は成長できるのだなあと思いました。
 自分が食べるもので、自分の健康にも被害が出るし、次の世代にも被害が出るので、正しい食事ができるような大人になりたいと思いました。まわりの人や自分のためにも食を大事にしていきたいです。だから、これからは、手作りにこだわって、食材を通して命の重さを感じて生きていきたいです。そして、自分の子供が生まれてきても、食の大切さをちゃんと伝えられるような立派な親になって行きたいと思います。
 今日の講演会は、私のいい加減な生活を変える、大きなきっかけになりました。


きっかけにしてくれて、ありがとうございます。
盛り上がれ、朝倉高校弁当の日。