第3回小ゼミFW「竹切り〜九大の森を守る!」 in 伊都キャンパス


伊都キャンパスには広大な緑地が残されています。


矢原徹一教授(理学研究院)の提案により、九州大学が二つのポリシー
1)キャンパス内に生息する生物を一種も絶滅させない
2)森林面積を減らさない
を掲げて移転することにしたからです。


一教員の賢明な考えと秀でた行動力は多くの仲間に支持され、キャンパス中心部に大きく割り込む谷部(“生物多様性ゾーン”と呼ばれる)とキャンパス敷地の周縁部の緑地、99haが残されました。総敷地面積275haの三分の一を超える面積です。世界初となるこの取り組みはNHKの特集番組や科学誌Sienceにも紹介され、内外の注目を集めています。


緑地の森は、かつてどこにでもある里山の雑木林や杉林でした。しかし、今では孟宗竹の竹林ばかりが目立ちます。孟宗竹は、成長がとても早く、筍から一気に15mくらいまで伸び上がります。竹林は年間に約7mも陣地を拡大するのです。孟宗竹は、まるで怪物のように、決して真似することのできない成長力で他の樹種を圧倒し、見る見るうちに雑木林や杉林を浸食していきました。伊都キャンパスで造成が始まった頃、孟宗竹の猛威を目の当たりにした私は孟宗竹にニックネームを付けました。


フォレスト・イーター(森喰い)


小ゼミ第3回フィールドワークはそのフォレスト・イーターとの戦いです。1本、1本、人力で倒ししていくのです。ゼミ性たちは6人一組の小隊を作り戦いに挑みました。隊員たちは「ただ足元を掬えばいいだけじゃない」と思っていました。ところが、それほど簡単でないことを彼らは思い知らされました。


フォレスト・イーターの足元を掬うことはとても難しいのです。隊員の武器である“ノコ”の歯がフォレスト・イーターの胴に入り込むほど、ノコを思うように動かせなくなります。例え完全に切断することができたとしても、フォレスト・イーターを他のフォレスト・イーターが支えてしまうので、地面に横倒しになってくれないのです。1本30kgはあるフォレスト・イーターを、彼らの群れから引きずり出すのも至難の業です。


1時間後、戦いが終わりました。1小隊あたり10本くらい、全部で60本くらいのフォレスト・イーターを倒すことができた。しかし、敵の集団の中で、その数以上の新しいフォレスト・イーターが育っていることを、隊員たちは見てしまったのです。明らかな敗戦でした。


伊都キャンパスには現在でも5700人くらいの学生が居ます。この学生たちの間で、
「おれ、この前、フォレスト・イーターを倒したぜ」とか、
「私、フォレスト・イーター・ジュニア(筍)を食べたわよ」
という会話が生まれるようなことになれば、伊都キャンパスの緑地が、生きもの豊かな森に育つのかもしれません。


『九大では「森ガール」よりも、「竹ガール」や「竹ボーイ」を流行らせる方がいいかもしれない。』


我々の戦場を横目に、優雅に舞うモンキアゲハを目で追いながら、私はそう思ったのでした。