土佐の宝石


高知へ


坂本龍馬を求めてではない。
鹿の子百合を求めて。


わずかな情報をもとに、狭い山道を縫って山深い里へ分け入る。


崖の斜面に垂れ下がって咲く鹿の子百合発見。



美しい。
淡い桃色の花は、深緑のモノトーンの中でひと際目立つ。


江戸時代、シーボルトによってヨーロッパへ紹介されたこの花を、
西洋人は
「もし美しさにおいて最高のものがあるとすれば、まちがいなくこの花である。」
と賞した。


もし、彼らが、この里山で自生のカノコユリにお目にかかったなら、言葉もでなかったのではないだろうか。
まるで“宝石”。
それほど、自然の中で咲く鹿の子百合は優雅な気品に満ちている。
坂本龍馬なら野に咲く鹿の子百合をどのように表現したのだろう。


夕刻、高知市内へ。
自宅を出る前にリセットした車の走行距離が720kmを表示していた。