生徒が自ら企画した弁当の日


今年6月27日。
私は愛媛県松前町立北伊予中学校のPTA会長Kさんの依頼を受け、
全校生徒に「食卓から始まる生教育 〜食べものでつながる命、育つ心〜」と題して話をさせて頂いた。


炎天下の体育館。
蒸し風呂のような暑さの中、
私は汗だくになりながら90分間話し、
彼らは俯くことなく最後まで聴いてくれた。
http://d.hatena.ne.jp/mich_katz/20100712


命のこと、食のことを真剣に受けとめてくれた生徒たちは、
“弁当の日”を自ら企画できないかと考え、
生徒会総会で“弁当の日”を議題として取り上げ話し合った。
http://d.hatena.ne.jp/mich_katz/20100719


生徒たちはただ者ではなかった。


K会長もただ者ではなかった。

福岡空港へ飛行機が着陸し、
私がターミナルビルへ足を踏み入れた瞬間、
携帯電話が振動した。
松山空港まで送ってくださったK会長からのメールだ。
まるで、到着時間を見計らっていたかのようなタイミングだった。

二日間、本当に本当にお世話になりました。そして、ありがとうございました。感謝、感謝です。家に帰ってから一時間半、妻と号泣しながら講演 会の感想を語り合いました。妻から『こんないい先生と巡り会えるなんて、父さんは、本当に幸せ者だ。このご縁に感謝しなきゃね。』とも言われました。幸せ なひと時をありがとうございました。生きる力をありがとうございました。明日が、未来が、待ち遠しい気持ちになりました。来月は高校生の娘と一緒に聴きに 行きます。これからもよろしくお願いします。支離滅裂ですみません。まずは御礼まで…。
 興奮覚めやらぬ、北伊予の松岡修三ことKでした。

この文面を読んだとき、
メール着信のタイミングが偶然でないと私は悟った。
こういうかっこいい大人は、“弁当の日”を必ず実現する。
http://d.hatena.ne.jp/mich_katz/20100627


私は、そんな学校も、そんな生徒も、そんなPTA会長も、見たことがなかった。


あれから二ヶ月余り。
K会長からメールが届いた。

先生、やりました!いや、やってくれました!!
運動会の予備日である来週の水曜日に、弁当の日を開催する事になったんです。
生徒会が提案し、生徒総会を経て評議委員会を開き、最終アンケートにて75%の賛成で開催が決定したそうです。
私が思い描いていた生徒主導での開催なので感無量です。本当泣きそうです 。
最初なので、親が手伝っても良いとかハードルを低くしておりますが、運動部も朝練習を中止にしてくれたりと先生方も協力的です。


この弁当の日開催に至ったのは、講演がひらまつ先生だったから、子供達が自分達で動き出してくれたのだと感じています。
うちの息子を筆頭に北伊予の子供達 は先生の事が大好きなんです。理由なんてないんです。ただ、単純に純粋に好きなんです。言葉じゃなく、心が伝わったのだと思います。心から感謝します、本 当にありがとうございました…。


やっぱりただ者ではなかった。
“弁当の日”を生徒たち自らが真剣に話し合い、具体的な方法を模索し、そして実践する。
これは快挙。
前代未聞。


日々の食事、日本の農業を大切に思い、自ら行動できる消費者を育てたい。
それが私が講演活動を始めた理由であり、その具体的なかたちとして、私は、“弁当の日”の実践を勧めている。


しかし、正直なところ、その目標に至ることはそう多くない。
どんなに講演を重ねて聴衆を感動させることができても、その後の稔りがないことも多々ある。
講演活動には自ずと限界があることを私は知っている。


北伊予中の弁当の日。
それは私の力だけで実現することはできなかったことなのだ。
私が施した水に反応して芽生える良質な種子があったからであり、その成長を大切に見守り、育てる大人たちがいたからである。


考えるだけの人には未来は変えられない。
行動した人だけにしか未来は変えられない。


北伊予中の生徒と大人たちは、それがちゃんと分かっていた。
そういう人たちとご縁を頂けた私はほんとうに幸せ者である。