卒業式


卒業証書を受け取った学生たちから研究室の教員や先輩学生はお礼の挨拶をいただく。


研究論文を書くことが大学での学びの集大成となっている今日では、とりわけ、研究の貴重なデータをとってくれた学生に対して、教員はたいへん有り難い気持ちで一杯である。


今年度、卒業論文を指導した女子学生は、私が提案した「有機野菜の不思議」を解き明かす研究に挑戦した。これまで研究室で誰も手を出さなかったテーマだけに、一人で黙々と実験や論文作成をこなす時間が多々あり、たいへんな苦労があったと思う。それでも彼女は最期まで弱音を吐くことなくやり遂げ、期待以上の成果を残してくれた。


同時に、教員が学生たちの成長にどれくらい貢献することができたのだろうと振り返ったりする。ほとんど研究者になることのない彼女たちが社会人や大人になったとき、私と関わったことがどれくらい役に立っているのだろうかと。


そんな最中、その女子学生からメールを頂く。

一年間でしたが、私はこの研究をさせていただいて本当に良かったです。


「研究」や「実験」として学ぶものももちろんありましたが、それよりも、比良松先生、吉田さんをはじめとするたくさんの方々と出会い、「食」や「農」について多くの知識と新しい考え方を学びました。


先生とのつながりで「弁当の日」や「自炊塾」にも参加することができ、私自身の食生活は本当に変わったと思っています。


心から感謝していま す。


私は3月から社会人となりますが、これからも料理やお弁当作りを続けたいと思います。


メールでの挨拶になってしまい失礼だと思いますが、感謝の気持ちが伝われば幸いです。


教師冥利に尽きる、たいへん有り難いお礼状だった。


在学中、姉妹とアパートに同居していた彼女は、姉や妹の分も含め、毎日三人分の弁当を作っていた。そして、この2月から国内大手の衣料品メーカーの仕事に就いた。大学を離れた今でも、会社に持って行く手づくり弁当をFBのプロジェクトページに投稿してくる。まさに有言実行だ。


彼女が大学時代に学んだ大切なことは、これからも彼女の暮らしに活かされることは間違いないだろう。