PTA会長になった理由 _ My Life


PTA総会の後は河東小PTA歓送迎会が行われた。新旧の教員、PTA役員が一同に会した。新会長の挨拶を求められ、そこで私は会長を引き受けた理由を述べた。


寝る間も惜しんで研究に没頭していた大学教員が、なぜ、誰もやりたがらない小学校PTA会長を引き受けたのか。


それは、子どもたちが大人になって自らの夢を実現したり、社会で活躍したり、幸せになる力を、大学よりももっと前の段階で育てることに関わりたかったからだ。


我が大学には、学力が高い学生たちがやってくる。しかし、その一方で、自分の夢を叶えられない者や夢を描けない者もいる。社会に出て何をしたいかという明確な目標を持てない者さえもいる。


何が原因なのか。


私なりに行き着いた答えのひとつが「人間関係力」だった。


よほど特殊な能力を持っている人でない限り、夢を実現することは一人ではできない。自分一人の力で社会で活躍することもできない。一人で生きるよりも多くの人と関わり合って生きる方が、より幸せになれる。誰もが感じていることではないだろうか。だから、誰かと関わっていく力が必要なのだ。


しかし、今、その人間関係力が低下している。子どもたちだけではない。大人の人間関係力も低下している。だから、家庭や地域社会で人間関係力を高める子育てができていない。社会全体で夢を描けないし、実現できない。


では、社会全体の人間関係力を高めるための具体的行動とは何か? 


それは、3年前から学童保育保護者会の役員を務めはじめてからしばらくの間、私が真剣に考えてきた課題だった。そして、およそ1年半前、大学で“弁当の日”に出会った時「これしかない」と思った。


“弁当の日”


それは、自分以外の人の“気持ちを読む力”を身につけることができる取り組み。そして、いつも自分のことを構ってくれる人の心の温かさに気付き、感謝できるようになる取り組み。そして、誰かに快く思われ、感謝されることを快く思うようになる取り組み。人の気持ち、人への感謝、人に感謝される喜びを実感しながら、人は誰かと繋がっていることを強く実感することになる。


子どもも大人も人間関係力を高める。
そのためにPTA一丸となって小学校で弁当の日に取り組むのである。
そのためにPTA会長を引き受けたのである。


そんなことを述べた後、私は最後に会場に居合わせた先生と保護者に尋ねた。


「もう一度、念を押しておきます。会長はこんな私でよろしいでしょうか?」


会場にどっと笑いが起こった。
少し手応えを感じた。