高校生のための体験授業
「うわ〜っ! スゴ〜い!」
すり潰したタマネギの汁にアルコールをゆっくり加えるとDNAの白いかたまりが姿を現した。それを目の当たりにして高校生たちの歓声が上がった。実験大成功。
2日間にわたる高校生のための体験授業。夏休み期間中の公開講座の一環として2004年から実施し、今年で5回目。園芸作物の品種改良の基礎技術を学ぶプログラムだ。ユリを材料に、花柱切断交配、子房切片培養、DNA抽出、親子鑑定を体験する。学校ではほとんど体験できない実技を体験してもらうことがこの授業の一番の売りである。
しかし、このプログラムで受講生に受けているのは実験だけではない。一昨年度から、プログラムの最後の2時間を使って実施している、大学生とのトークセッションも受講生に大変好評だ。
まず、「大学に入って初めて体験したこと、新たにできるようになったこと、挑戦したこと……」を大学生チームの一人一人に書いてもらい、それを紹介してもらう。
- 友達が増えた。
- 酒を飲めるようになった。
- 知らない地域から来た人たちと交流して視野が広くなった。
- パソコンを使うことがあたりまえになった。
- ファッションを楽しむことができるようになった。
- 英語の文章を読めるようになった。
- 留学生と英語で話せるようになった。
- 植物を育てることができるようになった。
- 自炊や掃除など、生活力がついた。
- 自らが発案した企画を実現できた。
……etc.
「ここに来るまでは自分で料理したことがありませんでしたが、母の料理を思い出しながら食事作りを頑張り、今では普通に作れるようになりました。それが一番変わったことです。」と言ったのは、韓国からの留学生。“お花見弁当の日”に二品作ってきた彼女に、そんなドラマがあったなんて私も知らなかった。
実体験に基づく現役大学生の生の声に刺激され、もっと聞きたいと、高校生たちにスイッチが入る。「さあ、質問したいことを何でも聞いてください。」と言うと、受験、バイト、サークル、生活費、就職、授業、留学、卒論……。たくさんの質問が出された。
大学生たちの丁寧な回答を聞きながら、一生懸命メモをとる一人の女子高校生の姿が印象的だった。彼女はまだ一年生。ついこの前まで中学生だった。その彼女が、九大農学部を目指している。森林保護や環境問題に興味があるのだそうだ。その子が次のような感想文を書いてくれた。
大学生の人に直接質問できたりしたのが1番嬉しかったです。実験も楽しかったけれど、自分の知識の少なさを思い知りました。もっとたくさん勉強しようと思いました。来年もまた体験授業に来たいと思います。
実は、この講座を受けた高校生の一人が、去年、九大農学部に入学している。今回受講した高校一年生の3年後が楽しみだ。頑張れ!