カノコユリ


この前、僕はこんな話しを聞いた。


「“もし美しさにおいて最高のものがあるとすれば、まちがいなくこの花である”。
江戸時代、シーボルトの手によって海を渡ったカノコユリを見た人がそう言ったのだ。」と。
その話しを聞いて、僕はこの街に住んでいることを誇りに思ったんだ。


だって、カノコユリは僕の街のシンボルだから。
カノコユリは、昔、僕の街にはいっぱいあったってじいちゃんから聞いたよ。


でも、気になる話しも聞いた。
「このまま放っておくと、カノコユリは、近い将来絶滅するかもしれない。」って言うんだ。


カノコユリだけじゃない。
この宗像には、他にもそんな生きものたちがたくさんいる。
絶滅しそうな生きものたちが。


メダカ
ドジョウ
タナゴ
ホタル
ウミガメ
キキョウ
エビネ
………


だから僕は種子(たね)を播くんだ。
カノコユリの種子を。
100年先の未来のために。


花が咲くまでには何年もかかる。
種子が芽吹いて苗が大きくなったら里親を捜そう。
できるだけたくさんの里親を。
大人も、子どもも、誰でも里親になっていいんだ。
そうすれば、街中にカノコユリの美しい花が咲き乱れるでしょう。


たくさんの綺麗な花を見れば誰だって喜ぶよ。
優しくなれるよ。
幸せになれるよ。


僕はこの街がいつまでもそんな街であって欲しいんだ。
100年先も。