市長への手紙 〜 カノコユリの悲劇
植物友の会での講演を終えての残念なお話。
会誌「かくれみの」にカノコユリのことが掲載されているから是非読んで頂きたいと会員の方々に言われた。
頂いた会誌をその場で開いて読むと、そこには市長への手紙と題するこんな記事が掲載されていた。
【カノコユリ自生地の工事について】
宗像市にはカノコユリの自生地と思われる所が、数カ所ありますが、平成18年度自然環境調査で花を確認した育成地は3カ所でした。個体数も10前後と非常に少ないものです。そのうち最も個体数も多く、花もつけていたのが、鎮国寺近くの吉田地区の農道に面した林縁でした。現在そこが、道路幅拡張のためか、すべて削り取られてしまっています。長い年月宗像の自然と向き合ってきた私どもとしましては、この事実はとても残念なことであります。そこで、以下に質問と意見を申し上げます。
①この工事箇所が、カノコユリの自生地であることを市として把握していましたか。もし、そうであるならば、何らかの対策、保護策をとられましたか。例えば、掘り出し、移植等。
②把握していなかった場合。平成9年度の市史でも,18年の自然環境調査でも、注目すべき植物として取り上げ、分布図もできています。そしてそのどちらにも吉田地区がカノコユリの自生地として記録されています。「自然に手をつけよう」とする時、上記の二つの事業を是非参考にして欲しいと思います。多くの人材と税金を投入しただけの価値ある内容となっています。また、私ども植物の分布や種類等で役に立つことがありましたら、いくらでも協力できると思います。
植物友の会 Y.K
【市長からの回答】
このたびはご意見いただきありがとうございます。……
今回の状況を調査しました結果を報告致します。今回の自生地については、ご承知のとおり、本市の資源廃棄物課の自然環境調査にて生育が確認されておりましたが、自然環境調査は、環境基本設計策定の基礎資料とするために実施したものであったため、市役所内部において情報共有ができていませんでした。その結果、工事担当課はカノコユリの自生地であることを把握しておらず、移植等の対策はとっていませんでした。今後は、今回の例を反省しながら、環境基本計画(植物等の分布情報)を内部でも共有し、何らかのチェック機能が働くような仕組みづくりに取り組んで参ります。また今後も、お手紙にもお書き頂いていますが、植物友の会のみなさまには、ご助力を賜りますようお願い致します。………
なんともやるせない悲しいできごとである。
カノコユリは市の花。
市のシンボルだ。
これは市民ならみんな知っている。
では、自治体のシンボルって何なんだろう。
何のために自治体のシンボルを決めるのだろう。
100年前、1000年前、ずっと前の昔から、その地域で受け継がれてきたものがあるから。
そして、
100年先、1000年先、ずっと先の未来へ、その地域で受け継いでいきたいものがあるから。
だからシンボルをつくる。
私はそう答えたい。
そういう想いを市民全員で共有していたい。
残念ながらカノコユリが絶滅の危機に瀕していることを知る市民は少ない。
受け継いでゆくことができなくなったものは、もはやシンボルとは言えないだろう。
環境基本調査を何のためにおこなったのか。
基礎資料こそ共有するべきものではなかったのか。
“なんらかのチェック機能が働く仕組み”を本気で作って欲しい。
いや、他力本願でなく、私は作りたい。