利己的眼差しから利他的眼差しへ


2月10日の記事に対し,ある方よりメールを頂く。

“市長への手紙〜カノコユリの悲劇”を拝読して


カノコユリ自生地の工事について」を読ませていただき、10数年前は大変申し訳ないことをしてしまったという複雑な思いがよみがえってきました。


当時、二丈町の中心部を流れる一貴山川や松末羅漢川の堤防には、ハマボウという植物が群生していました。近年、河川の護岸工事が進むにつれてそのハマボウの姿が消えていったのです。植物に関して特別の知識を持たない我々は、夏に黄色の花をつけるその植物の名前が何なのかさえ知りませんでした。


「いったい行政は何をやっているんだ。このままでは町内に存在する貴重なハマボウが絶滅するではないか」と、住民の方からおしかりの言葉をいただき、事の重大さに気づきました。住民の皆様の要望で河川護岸工事を進めなければならない一方で、自然・環境に配慮することの大切さを教えられたような気がしました。


あれから10数年。今では、地域の子どもからお年寄りまで一緒になって、ハマボウを守り育てる活動が根付いています。それは、行政だけが動いているのでもなく、また、地域だけに負担をかけているのでもありません。地域のことは地域で考え、地域住民自らが住みよい町をつくろう・・・という協働意識の醸成ができてはじめて、誇りを持てる町づくりができるように思っています。


カノコユリの件もハマボウの件も、行政のせいだとは思わない。
大切なのは、カノコユリハマボウのような郷土固有のものを私たちが知っているか否か。
知らないことは無意識の中で忘れ去られて行く。
ただそれだけの問題。


利己的ななまざしでは気づかないであろう,様々なものの向こう側にある大切なものに気づき,思いやるまなざし。
環境問題も、食の問題も、平和の問題も、そういうまなざしを持つことの大切さを教えてくれる。