長岡のスゴい人伝〜ロータス・エンターテイメント


「まず、コレからどうぞ」


そう言って目の前に差し出された茹でたてのレンコンは、
みたこともないような透き通る白さだった。
スライスされた一枚の小さなレンコンの輪切りを口に入れる。
シャキシャキとした新鮮な噛みごたえの後に、
やさしい甘味さが後から後からじわじわと舌に伝わってくる。


「甘いですね!」
と私が思わず叫ぶと、
「これが成長中のレンコンの味です。生きた味。」
とTさんは言った。


Tさんは長岡のレンコン農家。
奥様と二人で3.5ヘクタールの面積を栽培している。


「彫り上げたものを出荷するだけでは、レンコンの本当の良さを知ってもらうのはなかなか難しい。
だから、こんなふうにできる事は何でもするんですよ。」


次に差し出されたのが、掘りたてレンコンの一夜漬け。
醤油とショウガだけで漬け込んだものだが、
これがまた絶品だった。
今ここに飯があればいいのにという気分になる。


「今ならハスの実も食べれますよ。」
そう言って、畑に行ったかと思うと、
数分後にレンコンの花茎を手に5本ばかり抱えて戻ってきた。
蜂の巣のような花托から生育途中の実を数個取り出し頬張る。
茹でたての軟らかいピーナッツのような食感とやさしい甘さが口の中で交錯する。


「最近は、ナシ狩りやブドウ狩りのようなありふれた農業体験でなく、
もっと違った農業体験をと望む人たちからの問合せが多いんです。
たとえ個人的な依頼であっても、うちでは、
レンコンの掘り上げを体験するイベントまで対応していますよ。
そうやって人に喜んでもらえることが、
私たちが手塩にかけたレンコンを買ってもうことにつながりますから。」
と笑いながら言うTさんの表情は、やさしさと信念に満ちていた。


「せっかくだから、象鼻杯、やっていきますか?」
「え?ぞうびはい??」


ハスの葉の杯に注がれた酒を、
鼻代わりの葉柄を通して、
象のように飲むということである。
これを子どもたちの前や、宴席でやればさぞかし盛り上がるだろう。


Tさんのロータス・エンターテイメントは尽きることなく続いた。


レンコン一筋。
年商1500万円。


こういう素敵な農業が日本でもできる。