小ゼミ“いのちの授業”後期スタート

母さんへ
 母さん、俺は1つ勘違いしてたことがある。今まで俺は、『生まれてきたのは当然のこと』って心のどこかで思ってたみたい。最も、自分が生まれるまでのことなんて考えたこと無かったんやけどね・・・。九大の少人数セミナー・
『いのちの授業』が始まって3週目くらいやったかな、俺の誕生をどんな気持ちで迎えたか、っていう感じテーマでインタビューしたの覚えてる?正直、こんな歳にもなって自分の誕生秘話を母親に聞くなんて、恥ずかしいからテキトーに書いて持っていこうか。なんて思ったりしてたんやけど、そこで一歩踏み出せてよかったって今は確信してる。
  「母さん、ちょっといい?九大の小セミで母親にインタビューする宿題が出たんやけど」
  「いいよ、なになに?」
  「俺が生まれる時さ、母さん俺をどんな気持ちで迎えたのかなー?って。俺がお腹ん中にいる時のことでもいいけん、色々教えて」
 いきなり聞かれた時は、母さんも少しびっくりした顔してたね。でも少し考えてから、お腹があんなに大きかったのにこんなに小さいんだって思った、とか、初めて俺を見たときに片目だけ開いてて可愛かったよ、とかその時の話をいっぱいしてくれて、色々思ってくれてたんだなって、俺は自然とうれしい気持ちになったよ。特に、俺がお腹の中にいるときは毎日音楽を聞かせたり話しかけたりと気遣ってくれてたこと、小さい時は毎日お散歩に連れてってくれたことにはすごい愛を感じた。
 母さんには言ってないけど、あのインタビューが終わった後、うれしくなって俺の小さい頃のアルバムを開いてみたんよ。存在は知ってたんだけど、見たことはなかった。生まれてからの俺を撮ったフォト1枚1枚の横に、母さんのコメントが載ってるっていう『◯◯○くんのあゆみ』。母さんをはじめとして、◯◯ちゃんやじっちゃん、◯◯ちゃんの笑顔に囲まれてすくすく育つ自分はとても幸せそうな顔してたね。その中で一番心に残ってるシーンが、お喰い初め。赤飯や紅白まんじゅうが載った写真の横に、母さんの字で『◯◯君が一生食べ物に恵まれますように・・・』って書いてある。我が子への思いがギュッと詰まった1シーンに、俺は涙が止まらんかった。
 話は変わるけど、この前、コンビニ弁当は添加物がたくさん入ってるとか、ジュースやスポーツドリンクには糖分が信じられないくらい入ってるって言う話をしたよね。俺は小セミの授業で聞くまでよく知らなかったし、母さんも給食の先生になってからここ4,5年で知ったって言ってたね。そこで俺の幼い頃は毎日スポロン(甘い乳酸飲料)を3本飲んでたし、小学校になるとお茶代わりにいつもアクエリアスを飲んでたっていう話になって、母さんは
  「その頃は何も知らなかった。その頃に知っていればあんなに飲ませなかったのに・・。少し後悔してるんよ、これは親の責任。ごめんね」
 って言ってたね。でも大丈夫。俺は19歳の今知ることができたから、これから気をつけようと思うし、未来の俺の子どもにもそれを活かせばいいやん。俺のわがままを出来る限りきいて育ててくれた母さんの子育ても、1つの良いところだと思ってるよ。
 小セミを受けて、俺は考え方、いや生き方が変わった気がする。下手すると一生聞く機会がなかったかもしれない自分の幼いころの話を聞いて、愛情の大切さを知ったし、食品に含まれる添加物・糖分の話を聞いて無知はいけないことだ、って思った。俺は子どもを愛し、食べ物も愛せる大人になりたい。子どもを愛すことはその子の健やかな成長を助けるし、食べ物を愛すことは巡り巡って全てを大切にできることに繋がっていく。そして、俺はそれを全ての人にその事実を知って欲しいと思ってる。俺だけが知って終わるんじゃなくて、これからもっともっと食、いのちの勉強をしてそれを周りの人に伝えて、いのちの輪を作っていきたい。孤食、悪食、虐待を最近よく聞くけど、俺はそんな人たちに『いのち』を知って欲しい。自分だけじゃなく、俺は人のいのちまで良いほうへ変えられるような大人になりたい。 そう思えるのは、当然母さんのおかげも大きいよ。最後になったけど、母さん無償の愛をいっぱい注いでくれてありがとう。◯◯は立派な大人になります。


「いのちの授業」前期を受けた学生たちはこんなふうに私の想いを感じ取ってくれた。


そして今日、「いのちの授業」後期のスタート。


集まった13名の女子学生。
彼女らに私は最初に伝えた。


「この授業では、みなさんの身体の状態を1ヶ月で改善するという、大学ではたぶん初めての取り組みに挑戦します。そのために、土日を利用した課外授業を二回受け、そして、1ヶ月間、自炊を毎日やることになります。ついて来れそうにない人は、受講しなくても構いません。……しかし、とても素晴らしいアドバイスをしてくださる様々なゲスト講師をお招きします。あなたたちの取り組みに興味を持ったテレビ局の取材も入る予定です。この取り組みに既に挑戦した小中学生や高校生は、自分の身体の状態が改善されていくことを体感しました。あなたたちもやればわかります。やればできます。私を信じてついて来てください。」


このとても高いハードルの設定にも関わらず、誰一人として退室する者はいなかった。


大学生のお腹畑づくり。


いよいよスタート。