小ゼミ“いのちの授業"〜今、伝えたい私の気持ち2

お母さんへ

                            
大学に入って4ヶ月がすぎました。


この4ヶ月、いろいろなことがありましたが、その中で最も貴重な経験だな、と思えるのは、初めての「弁当の日」の経験でした。有機無農薬野菜作りに参加したときで、おかずのテーマは、「子供の日」でした。初めは、ゆで卵を半分に切って、マッシュポテトを詰め、ソーセージやきゅうりで鯉のぼりの形を作ろうと思っていました。しかし、それを聞いて、お母さんは1言。


「ありきたりじゃない。それに、子供の日=鯉のぼりって、あんた単純ね。」


まぁ確かにそうかもしれないけど・・・自分で考えて、自分で、おかず1品作るんだから、口出ししないでよ、と、私は、少しむっとしました。


「パイシート使いなさいよ。そっちのほうが、時間も早いし、見た目もきれいよ。」


確かに・・・。でも、これってお母さんの意見じゃん・・・。しかし、迷ったあげく、私は、お母さんのアドバイスをもとに、パイシートを使って、鯉のぼり型のミートパイを作ることにしました。鯉のぼりは譲れなかったよ!!中身の具は、そんなに時間もかからなかったけれど、鯉のぼりのうろこを作るのは大変でした。1枚1枚、卵をのり代わりにして、つけていきました。そして、オーブンで20分焼いて、完成。うん、見た目はOK、後は、味だ・・・。緊張しながら、お母さんに味見してもらいました。お母さんは、味に厳しい人だから 、普通ぐらいの評価もらえたらいっか、そう思っていました。でも、お母さんから返ってきた答えは、


「おいしい!」


でした。料理に関して、お母さんに初めて褒めてもらえた瞬間でした。嬉しくて、嬉しくて、夜中の4時をまわっていたけれど、眠気もどこかにとんでいってしまいました。


そして、フィールドワーク当日、みんな、おいしいおいしいと言ってくれ、鯉のぼり型ミートパイが、全部なくなっているのを見たとき、お弁当を作ること、料理を作って誰かに食べてもらうことってこんなにも心温まることなんだ、と、作ってもらって食べる側だった今までには味わったことのない気持ちになりました。お母さんが、お弁当作るの好き、と言っていた理由が少しわかるような気がしました。


でも同時に、おかず1品さえこんなに時間がかかって、大変なのに、毎朝5時に起きて、約1時間半で、私、妹、お父さんの3人分のお弁当を作ってしまうお母さんのすごさに、感謝の気持ちと尊敬の気持ちがわきました。毎日仕事で朝から夜まで働いて、仕事の後も、ダイエット、といって、週に3回ぐらいのペースでジムに行って、毎回6km走って、帰ってきても、家で仕事の続きをして、そのうえで、お弁当3人分まで作っちゃうお母さん、本当に、心の底から尊敬しています。


この、フィールドワークの数日後、びっくりすることが起こりました。それは、妹の友達が家に遊びに来た時に、お母さんに、「◯◯○、ミートパイ作ってみんなに出して。」と、頼まれたことでした。今まで、料理のことで、頼られたことなんてなかったから、すごくびっくりしたけれど、1つでも、お母さんに認めてもらえたって思えて、泣きそうになるくらい、嬉しかった・・・。料理もっとうまくなりたい、もっといろんな料理作れるようになりたい、という思いがますます強くなりました。


弁当の日を経験したことで、私とお母さんの距離は、今までよりもっともっと近くなった気がします。お母さんと勝負できるくらい、愛情のこもった、おいしい、かわいいお弁当を作れるようになることが、私の、今の目標です。


お母さんありがとう。本当に、ありがとう。


お母さんのお弁当は、見た目も、味も、誰のお弁当にも負けない、自慢のお弁当だよ。


子どもはいつも親の背中を見ている。