クロス・カップリング


ノーベル化学賞を二人の日本人が受賞した。


有機物質の炭素結合を飛躍的に向上させる“クロスカップリング”反応の発見が受賞理由。普通ではなかなか結びつかないものどうしを、パラジウムやホウ素、亜鉛に仲立ちさせることによってブレイクスルーを生み出した。その技術は医薬品やプラスチックなど、今や私たちの生活になくてはならない製品を支えている。


普通では結びつかないものどうしを結びつかせた時のブレイクスルーは大きい。


坂本龍馬は、犬猿の仲だった薩摩藩長州藩を、さらには、自らが脱藩した土佐藩をも結びつけ、他の誰もが無理だと思っていた大政奉還を実現した。


我が国の食糧自給率、40%。日本人の消費行動は、国内農業の支援になかなか結びつかない。西日本新聞社のメガヒットシリーズ“食卓の向こう側”は、タイトルどおり、食の向こう側にあった見えざる真実や大切なものを伝え、消費者の目を農業問題へと向けさせた。佐藤弘さんという非凡な新聞記者のによって成し遂げられた見事なクロスカップリング反応である。


野菜は作り方で味も成分も変わる。
野菜は作り方で病害虫の被害が変わる。


この事実を客観的データで示すことができれば、より多くの消費者が本当に大切な農業とは何かを考え始め、身体に良い農作物を追い求め始めるだろう。そうなれば、より多くの農家がそういう作物づくりを真剣に考え始めるだろう。


農学者の端くれとして、私はそういうクロスカップリング反応によるブレイクスルーを起こしてみたい。