小ゼミ“いのちの授業"〜今、伝えたい私の気持ち7

私の妹、◯◯◯と◯◯へ


 ◯◯○、◯◯、手紙を二人に書くなんて初めてやね。今回はちょっとまじめな話をしようと思う。長いけど、最後まで読んでね。
 ◯◯○、◯◯、二人は今それぞれ学校に通って忙しい生活を送りよると思う。お姉ちゃんは、そんな二人の生活が充実してくれとったら嬉しいな。でも、そんな生活の中に、二人が普段気づくことのないたくさんの命が隠れとることを知って欲しいと思う。そして、その命の上に、あなたたちが生きとることの意味を考えてほしいと思う。命といってもね、今生きとうものだけやないよ。ほかの動物の命を頂いている、というのはもちろんだし、「食」以外でも、自然を切り開いて生活する場所作っているということも挙げられる。あなたたち二人の命は、お母さん、お父さんの命から生まれたものだということも言えるよね。更には、あなたたちが次の世代を生み出していくという意味でも、そこに命が潜んでいるんだよ。
 その中でも二人が毎日食べとるお弁当に注目してみてほしい。朝起きたら、必ず用意してあって当たり前のように食べている。作っているのは、もちろんお母さんだけど、二人はお弁当を作ることがいったいどんなことを意味しているか考えたことはあるかいな。
 お姉ちゃんは、恥ずかしながら、大学の授業の中で初めて自分のお弁当を作った。「きっと足りるだろう」と思っていた時間は何倍速もの早さで過ぎ、完成間近のお弁当もいつものとはなんだか違う。いつものお弁当は、色々な種類のおかずが隙間なく詰まっていて美味しそうなのに・・・詰めるだけでも苦労しとった。お母さんは、毎朝それを朝の5時くらいから、3人分、時には4人分作っとる。朝から、立ちっぱなしで、沢山のおかずを考える。すごく、大変なことなのだと気づかされた。
 同時に「どうして自分が食べる訳でもないのに、毎日続くのだろう。」と、不思議に思った。その答えにね、学校で授業を受けとるときに出会えたとよ。それは、「愛情」を母さんが私たちに持っとうからだって。『玄米先生』という漫画でそれを知ったっちゃけど、普段そんなことには気づけんよね。愛情がなければ、ただの義務だったら、人は10年以上もこんなことできんよ。簡単なことなのに、はっとさせられた。我が家のお弁当は、デザートもついていて、おかずも手作りのものばかりで、自慢すべきお弁当だと思っとう。
 でも、私たちは「お弁当の量を減らして」「お弁当やなくて買って食べるけんいい」って簡単に言ってきた。それは、今思えばお母さんの愛情を傷つけとったんやと思う。
 お母さんの無言の愛情が込められているお弁当。私は、そんなお弁当の意味を、私の子供にも気づいてほしい。だから、子供がどんなことを言っても、「お弁当には愛情がこもっている」のだということを忘れないで、子供が誇りに思えるお弁当を作れる大人になりたいと思った。そして、このことを、こうやって兄弟に伝えたり、子供に伝えたりすることでこの場だけで終わらせないようにしたい。
 私たちは、親の生に支えられて生きている。もっと遡れば、その食材を作る人、その食材が育つ大地、その食材自体の生の上に生きている。そして、私たちは次の世代を支える必要がある。一つの弁当からこんなにたくさんの命が見えてくる。
 私は、当たり前の生活の中から、自分を支えてくれる命に気づける人間になりたいし、二人にもなってほしいんよ。そこに思いを馳せることで、未来を思うことで、自らの食や農に対する行動が変わると思うから。食事をするときに食品添加物がたくさんついたものを選ばなくなったり、食事を作るときに無駄なものをなくそうと思ったり、相手を思ったりできるようになる。些細なことでいいと思う。それを、「伝えていく」ことを忘れないように日々を過ごしていく。これが大切だと思っとう。
 二人には、まだちょっとピンとこんかもしれんね。あと何年かして、自分で生活を送るようになるときに、もう一度この手紙を読み返してほしい。そこで何か感じてくれたらいいな。


つながれ!“弁当の日”DNA