小ゼミ“いのちの授業"〜今、伝えたい私の気持ち9

お母さんへ


 産んでくれてありがとう


 それが今お母さんに伝えたい私の気持ちです。こんなことはきっと直接は言えません。手紙でも自主的にはたぶん無理です。だから少人数セミナーで与えられたこの機会はとても貴重で、大切にしたいと思いました。
 大学での少人数セミナーの授業を通して、改めていのちについて考えるようになりました。今までにも何度もいのちについて考える学習はあったはずです。でも学年があがり中学校、高校と進学していくうちにそのような機会はどんどん少なくなりました。大人になるにつれてより真剣に考えなければならないはずなのに、逆に何も意識しなくなっていた気がします。だから、大学に入ってこの授業を選択して本当に良かったと思っています。
 授業で、おなかの中で亡くなってしまった子供を産まなければならなかった人の話を知りました。考えただけで涙が出てきました。こんなにつらいことはないと思いました。産まなければならないお母さんはもちろんつらいし、それを周りで見守る家族や助産師さんなど誰もがつらいと思いました。もし自分がそんなことになったら・・・と考えただけで涙が出てきそうになりました。普段の私は自分が生まれてきたことを奇跡だとは思ってもいませんでした。むしろ、自分が生まれてきたことについて考えたことや意識したことさえもあまりなかった気がします。
 この話を聞く前の先生からの宿題で、お母さんに私が生まれたときに思ったことを尋ねました。するとお母さんは「無事に生まれてきて良かった」と答えました。その答えに私は「え〜それだけ〜?」と言いました。しかし今は、それこそが子供が生まれるときに親が一番望むことだとわかりました。そして、「子供が無事に生まれて良かった」と思えることは一番の幸せだと気づきました。授業で紹介された「生まれてくることは奇跡である」「今生きていることは奇跡である」という言葉は本当にその通りだと思います。私がこの家族のもとに生まれ、今こうして生きていることも奇跡です。だからこそ、奇跡と言える私の人生を自分のためにも、家族のためにも大事にしようと思いました。
 今の私は多くのこと、多くの人に支えられています。その中でも今までずっと支えてくれて、これからもずっと支えてもらうのはやはり両親、そして家族です。小さい頃から怒られてばかりで、妹や弟とも喧嘩してばかりでした。でも、私はこの家族のもとに生まれて本当に良かったと今改めて思います。特にお母さんにはいつも文句ばかり言っているし、お母さんのようにはなりたくないなどと言ったこともあります。

 お母さんごめんね。

 今考えると子育てや家事、そしてお母さんの人柄など様々な面で尊敬するところがたくさんあります。私は専業主婦をしていたお母さんとは別の道を選び、将来医師になってやりたいことがいくつもあります。今まで勉強を頑張ってきてやっとのことで医学部に入学できました。これからももっと頑張って医師を目指すのだから、今までの努力を無駄にしたくないという思いもあります。だから仕事は絶対にやめたくないと考えています。
 そうなると仕事を優先して結婚や出産、子育てをお母さんがしてきたように満足に行うのは難しいかな、などと思っていました。しかし、授業を通して子供を産むことのすばらしさを知りました。そしてそれをきっかけにお母さんの姿を振り返ってみると、やはり自分もお母さんのように子供を産んで、子育てで苦悩しながらも頑張って、素敵な家族をもちたいと思いました。だから、まだまだずっと先のことかもしれないけれど、仕事と家庭を両立できる女性になろうと決めました。そして自分もお母さんのような、素敵なお母さんになりたいです。
 授業を通していのちについて学び、様々な人の様々な活動を知って、自分が将来母親になったら絶対にやろうと思ったことが2つあります。
 1つ目は「弁当の日」です。小学生が自分でメニューを考えて、朝早く起きて、何度も失敗してやっと弁当を自分一人で作り上げる。それを知ってとても驚き、感心し、感動しました。料理ができるようになるだけでなく、家族の優しさに気づいたり、新たな発見があったり。子供にとっても親にとっても得るものが大きな取り組みだと思います。だから将来自分が母親になったら、ぜひ子供にさせてみたいです。
 そしてもう1つは本の読み聞かせです。先生が授業中に紹介してくださった「ここ」や「いのちをいただく」という本は、とても考えさせられる内容で、自分でももっと読みたいと思いました。それだけなら図書館で借りても良いけれど、「将来自分の子供に読み聞かせたい!」と思い購入しました。お母さんには気が早いと笑われたけれど。私は普段から家族みんなでいのちについて考えることのできる、そんな家庭を築きたいです。
 この少人数セミナーを通して、自分のいのちのことや家族のこと、将来のことについて考えるようになりました。そして生きることも奇跡だから、毎日を有意義に、精一杯生きようと思いました。
 まったく同じ日なんてないのに、今の私は毎週同じパターンの生活をしているような気になっていました。でもこれからは、毎日家族や友人と接して新たな発見をしたり、新たな喜びを見つけたり、毎日「今日1日生きててよかった」と思えるような日々を送りたいです。


“読み聞かせ”に対象年齢はない。