パピヨンビオトープの春〜学校で絶滅危惧植物を育てる理由
蝶が舞い、絶滅危惧種カノコユリが自然に増える花壇「パピヨンビオトープ」に
一気に春が訪れている。
冬を耐え忍んで成長したハーブ。
日に日に伸び上がるソラマメとエンドウ豆。
畑の土の表面を覆う菌糸(通称どきん(土菌)ちゃん)。
作業の合間にくつろげる木製ベンチ。
そして萌芽したカノコユリ。
なぜ、校庭で絶滅危惧植物を育てるのか。
日本の生物多様性を守っているのは、手つかずの自然だけではない。
私たちの身近にある田んぼや小川、ため池、雑木林、阿蘇や久住に広がる放牧地など、
適度に人の手を入れながら維持されてきた自然も多種多様な生き物を守ってきた。
しかし今、放置、開発されて減少するこれら“二次的”自然の中で、絶滅へと追いやられている生きものが多数居る。
田んぼの中のトノサマガエルやシャジクモ。
田んぼの周辺に点在する水たまりや池の中のカスミサンショウウオやコウホネ。
小川に生息するメダカやドジョウ。
雑木林の中のニホンアカガエルやエビネ。
宗像市のカノコユリの場合、
林縁や断崖のような生育に適した環境が管理放棄や道路宅地造成のための開発によって失われていることや、
増え過ぎたイノシシによって球根が過度に被食されることが、
絶滅のリスクを高めていると予想される。
したがって、
イノシシによる被食や山林・道路開発を免れる場所を、
カノコユリの新たな生育地として用意することが次善の策となる。
カノコユリの避難場所を学校の中に作った。
それがパピヨンビオトープだ。
学校は教育の場。
身近な場所で生きものどうしの持ちつ持たれつの関わりを観察できることは、
子どもたちへの生命教育に大いに役立つ。
カノコユリの花粉を運んでくれるのはどんな動物か?
その動物が育つにはどんな餌が必要か?
カノコユリの種子はいつ発芽するのか?
発芽したカノコユリが生き残りやすいのはどんな環境か?
生き残ったカノコユリが花を咲かせるまでに何年かかるのか?
カノコユリが身近な場所に育っていれば、そういう生態が見えてくる。
その知識が野生のカノコユリを守ることに活かされる。
カノコユリを学校の中で守ろうとするのにはそういう意味がある。